(ニューヨーク)-国連総会がリビアの国連人権理事会(HRC)メンバー資格停止を決定するという前例のない措置をとった。この措置は、リビアで重大な人権侵害に関与すれば将来その法的責任を問われようという強い警告である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル・アドボカシーディレクターのペギー・ヒックスは「国連総会のこの前例のない行動は、リビア政府に対する、自国民への攻撃を止めよというシグナルである」と指摘。「リビアの国連人権理事会のメンバー資格停止処分は、カダフィ氏とその仲間に対し、自国民の権利を否定して攻撃を加える行為は、将来その法的責任を問われるだろう、という事前通知的性格だ。」
2011年3月1日の国連総会で、レバノン政府が、国連人権理事会のリビアのメンバー資格を停止する今回の動きをリード。「大規模かつ組織的な人権侵害」を根拠とした。リビアの理事会メンバー資格を停止する決議案は、多数のアラブ諸国やアフリカ諸国を含む72カ国政府によって共同で提案された。決議案は全会一致で採択され、カダフィ政権に対する国連総会の強い警告を一層浮き彫りにした。
リビアの加盟国資格を停止した国連総会。国連総会だけでなく、ここ数日間、国連安全保障理事会及び国連人権理事会もリビアに対して強い姿勢で臨んでいる。総会もこれに歩調をあわせた形だ。しかしながら、リビア以外にも、注目と行動を必要としている国々の状況がある。しかし、これらの国連の3機関は消極姿勢を崩していない。人権侵害に対し強い姿勢でのぞむことが必要なのに、国連諸機関が消極姿勢を続けている国に、たとえば、アフガニスタン・ベラルーシ・イラン・ジンバブエなどの国々があげられる。
前出のヒックスは、「リビア問題に国連の諸機関が協調して対応している。しかし、一方で、同じ国連機関が、なぜ他の人権侵害を批判しないままなのか?という問題がある」と指摘。「リビアに関する今回の国連の行動は、人権問題ゆえに危機的崩壊状態が起きる前に、国連諸機関が強い取り組みを行なうモデルとするべきである。」
国連人権理事会は2006年の国連総会決議によって設立された。その設立決議は、「同理事会メンバー国は、人権の促進と保護において最高水準を維持しなければならない」と規定している。
各国政府は地域グループに分かれているが、残念ながら、自らの地域に割り当てられた議席数に応じた候補国しか理事国候補にしないのが通常だ。このように理事国に立候補する国の数を事前に調整する慣行ゆえに、理事の「資格」はほとんど無意味になっている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘。調整後のリストに掲載された立候補国は、その国の人権状況に関わらず、当選がほとんど保証されているからである。2010年に理事会メンバーの候補国の1つとしてリビアを提案したアフリカ地域グループは、事実上毎年、競争が起こらないよう候補国リストを調整してきている。
この理事国選びに関する悪癖は、2011年5月に予定されている選挙でも続くと見られる。というのも、今のところ、地域グループに割り当てられた議席数を上回る候補国が出ているのは東欧グループと中南米・カリブ諸国グループだけ。しかし、この状況は今から変えることもできる。2007年の理事国選挙の際には、ボスニア・ヘルツェゴビナが理事国選挙のたった8日前に立候補を表明。この立候補ゆえに東欧の地域割り当て数を超える国が選挙に立候補することとなった結果、ベラルーシ政府の落選が実現した。
「国連人権理事会の選挙が間近に迫るなか、国連加盟国は、自らに対し、そもそもなぜリビアのような国が人権理事会の理事国として当選していたのか、を問うべきである。今こそ国連総会は、人権理事会の理事国資格として設定された基準を真剣に受け止め、将来、人権理事会のメンバーになりたいと立候補する国々に、実際にその基準を適用するべきである」と前出のヒックスは述べる。