HUMAN RIGHTS WATCH

ビルマ:軍事政権に外国投資が資金提供

企業は、弾圧を糾弾せよ

(ニューヨーク-2007年10月2日)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日、「中国企業、インド企業、タイ企業、そのほか、ビルマで活動するすべての企業は、自らの営業活動が、人権侵害を助長したり、人権侵害から利益を享受することのないようすべきだ。」と述べた。ビルマの軍事政権は、平和的なデモ参加者たちに対し、暴力的な弾圧を始め、これまでに、多数の死者、強制失踪、大量の恣意的な逮捕を生むに至っている。

「ビルマで活動する企業は、『企業の存在は、建設的で、ビルマの人々の利益になる。』と主張する。しかし、企業は、ビルマ政府の自国民に対する人権侵害を、未だに糾弾していない。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのビジネスと人権プログラムのディレクター、アービン・ガネサンは述べた。「僧侶やその他の平和的な抗議者たちが、殺害され、投獄されている間沈黙することは、建設的関与の証拠にならない。」  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「ビルマで活動する企業は、現在進行中の人権侵害を終わらせるよう、国家平和発展評議会(SPDC)に対して影響力を行使すべきだ。」と述べた。現在のような状況の下では、企業は、SPDCに対し、弾圧をやめ、全ての政治犯を解放し、反対勢力と民族グループとの真の対話を始めるよう、迫るべきだ。仮に状況が改善しない場合、企業は、ビルマでの企業活動を再検討すべきである。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「ビルマでは、政府が、石油とガスで、いくら収入を得ているか不透明だ。また、その収入の使用の用途も不透明だ。」と述べた。政府予算の最大の取分は軍へ流れる。そして、SPDCは、保健や教育などの社会事業には、ごく僅かの予算しか割り当てない。  
 
ビルマの石油産業部門および天然ガス産業部門に対する外国からの投資は、特に大規模だ。軍事政権にとって、天然ガスの売上げは最大の資金源。ガスの輸出は、ビルマの2006年の輸出の優に半分を占めた。ビルマのガス・ビジネスは、2006年、主な買い手であるタイへの売却により、21億6000万ドルの収益をもたらした。これらの資金は、直接、軍政の手に入り、軍事政権の主要な(しかも国民とは完全に無関係な)資金源となっている。  
 
ビルマの石油産業とガス産業に対し、現在投資をしているのは、オーストラリア、英領ヴァージン諸島、中国、フランス、インド、日本、マレーシア、シンガポール、韓国、タイ、ロシア、そして米国などの企業だ。  
 
SPDCは、ここ数年、ビルマの石油産業と天然ガス産業に対する投資を大きく拡大してきた。石油とガスに対し、外国からの投資を入れるのが、より多くの収益を得ることが目的であることは明らかだ。そして、こうした収益は、経済政策の失敗、莫大な軍事費、新首都ネピドー建設で、財政が逼迫している軍事政権を、どうにか維持するためのものだ。天然ガスの探査、開発、生産の事業計画が、およそ30のガス田で進行中だ。これらの事業は、ビルマ政府企業Myanmar Oil and Gas Enterprise(MOGE)とのジョイント・ベンチャーだ。  
 
「ビルマの石油産業とガス産業に対する外国からの投資は、ビルマの残忍な支配者たちにとっての命綱となってきた。」とガネサンは付言した。「軍事政権の財政を援助している企業たちは、政府の弾圧が他人事であるとは主張できない。」  
 
事業の詳細  
 
現在、SPDCは、陸上ガス田「ヤダナ ガス田」と「イェタグン ガス田」から、莫大なガス・マネーを享受している。ヤダナ・コンソーシアムは、フランスのトタル社が率い、米国のユノカル(現シェブロン)、タイの政府下のPTT Exploration and Production Co Ltd(PTTEP)などから成る。イェタグン・コンソーシアムは、マレーシアの国営企業Petronasが率い、PTTEPや、日本の新日本石油などから成る。PTTEP(タイ政府系企業PTT Public Co Ltd(PTT)の子会社)は、タイへの輸出用にガスを購入している。  
 
大規模な沖合の天然ガス事業が開発段階にある。韓国企業とインド企業のコンソーシアムは、Myanmar Oil and Gas Enterpriseとパートナーシップを組み、ビルマ西部のアラカン州沖に大規模ガス田を発見した。シュウェ ガス事業として知られ、ひとたび生産段階に入れば、巨額の収益を生むと予測されている。シュウェ ガス田のガス埋蔵量は、370億ドルから520億ドル相当とされる。そして、20年間にわたって、現在の軍事政権又は将来のビルマ政府にもたらす総収益は、120億ドルから170億ドルに上りうる。  
 
シュウェガス コンソーシアムは、韓国の大宇インターナショナル、インドと韓国の国営会社、そしてMyanmar Oil and Gas Enterpriseから成る。こうした外資パートナーのなかには、他にも利権を獲得するため、ビルマ政府機関との間で、別途の取引もしている会社もある。  
 
例えば、9月24日、インド政府下のOil and Natural Gas Co(ONGC)(子会社ONGC Videshは、シュウェガス田コンソーシアムのパートナー)は、より沖合にある3つのブロックでのガス探査のため、Myanmar Oil and Gas Enterpriseと契約を締結した。この取引で、Oil and Natural Gas Coは、ONGC Videshを通じ、15億ドルを投資することを約束した。  
 
インドの総統府はOil and Natural Gas Coの株式の75%近くを保有している。インドの石油大臣Murli Deoraは、先週、合意書に署名するため、ビルマの首都を訪れた。ビルマで、何千人ものデモ参加者たちが、政治的自由、SPDCによる人権侵害の停止、経済改善を求め、街頭でデモを繰り広げていた時に、である。  
 
インドは、中国やロシアと同様(両国とも、ビルマの天然ガス産業部門に対する主要な投資国)、SPDCに対し、政治的支援及び軍事的支援をしてきた(http://hrw.org/english/docs/2007/09/25/burma16951.htm)。インドと中国は、シュウェガス田の買入をめぐり、競争関係にある。8月、ビルマのエネルギー関係のトップ官僚は、ガスを買入するのは中国であることが非常に好ましいと発言したが、一方で、売買の合意がまだ最終的ではないことを示唆した。  
 
中国企業は、ビルマに石油とガスのパイプラインを建設しようと活発に活動している。計画の1つは、沖合のシュウェガス田から中国へガスを輸送するパイプライン。もう1つのパイプラインは、中東の石油を、ビルマを横切って中国へ運び、交通量の多いマラッカ海峡の航路を迂回するものだ。ビルマを横切って陸路のパイプラインを建設するというこうした計画は、過去の経験に照らすと、人権への深刻な懸念を引き起こす(http://www.hrw.org/english/docs/2007/03/24/burma15557.htm)。ヤダナ-イェタグン ガス輸送のためのパイプライン建設並びにこれに関連するインフラの建設をめぐり、1990年代に大きな議論が起きた。ユノカルとトタルは、各々、米国とフランスで、ビルマの村人たちから訴訟を提起され、ビルマ軍が行った残虐行為(開発予定地域から村人たちを追い出したり、パイプライン建設を進める中で残虐行為が行われた)の共犯と非難された。両社は、最終的に、両訴訟で和解した。  
 
SinopecとChina National Petroleum Corporation(CNPC)は、計画中の新「ビルマ-中国」パイプライン事業に対し、強い関心を示してきた中国企業。両社は、中国の国営の石油会社で、ビルマのガス探査にも関わっている。両社は、2008年の北京オリンピックの正式なパートナー(主なスポンサー)でもある。そして、スーダンとビルマにおける両社の投資が、人権に対して与える影響について、ますます社会の審査を注目を浴びている。  
 
インドと中国は、近時のビルまでの弾圧を批判することに消極的だった。ロシアは中国に同調し、国連安全保障理事会がビルマに対して行動を取ることを阻止した。  
 
国営、民営両方の外国投資に加え、ビルマとビジネスをしている企業には、金融取引をしている銀行、そして、ビルマから物品を輸入する企業などがある。例えば、中国への木材輸出は巨額だ。その他にも、SPDCは、宝石(特にルビーとヒスイ)売却で、相当の収益を上げている。これらの宝石は、第三国で磨かれ、それから、欧州や米国の小売店に辿り着く。制裁は、第三国で加工されたビルマ産の商品の輸入は禁止していないからだ。  
 
米国は、ビルマの軍政幹部の海外口座を標的として、新たな金融制裁を科した。そして、欧州の指導者たちの中にも、SPDCが、民主主義活を求める人びとに対する暴力的な弾圧を止めないなら、追加的なターゲット制裁を要求するという声があがっている。  
 
「軍事政権の最大の取引相手たちは、ビルマの支配者たちが、自らの懐を肥やすことを止め、その代わりに、その莫大な収益をビルマの一般国民の生活を改善するために使うよう、求めるべきだ。」とガネサンは述べた。