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Soldaten im Township Alexandra, Südafrika, wo sie eine 21-tägige Ausgangssperre gegen Covid-19 durchsetzen sollen, 28. März 2020. © REUTERS/Siphiwe Sibeko

(ニューヨーク)ー各国政府は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の拡大を防止し、人権を犠牲にすることなく特に影響を受ける人をまもるために緊急に措置を講じるべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチが新たに発表した40項目からなる新型コロナウイルス感染症危機対応に関するチェックリストは、各国政府が新型コロナウイルス感染症の世界的流行が引き起こす諸問題に対処する際の指針となる。

2019年12月に中国の武漢で初めて発生が確認された新型コロナウイルスは、人々の健康や自由、生活手段に影響を与え、世界的な人権危機を引き起こした。今回発表されたチェックリストは、ロックダウンその他の「社会的距離をとる(ソーシャルディスタンシング)」措置がもたらす損害を軽減する必要を認め、世界的流行によって特に困難に直面する人々が受ける経済的悪影響に取り組む政策対応の枠組みとなる。

「新型コロナウイルス感染症は公衆衛生に対する非常に大きな試練だが、長い間くすぶり続けていた人権問題に対処する機会でもある」とヒューマン・ライツ・ウォッチの危機対応アドボカシー・ディレクターのアクシャヤ・クマールは述べた。「この危機に対応する政策は、私たちのコミュニティはその中でもっとも弱い立場にある人よりも健康ではあり得ないことをふまえるべきである」。

チェックリストはヒューマン・ライツ・ウォッチが世界各地で行った調査に基づいており、交差性を意図し、貧しい人、民族的および宗教的マイノリティ女性障がい者高齢者レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の人移民難民子どもなど、もっとも危険にさらされている集団のニーズに答える対応の概略を示している。

2020年4月13日の時点で、210の国と地域で新型コロナウイルス感染症の感染者が確認されている。世界で200万人の感染が確認されており、同感染症が原因で11万9000人が亡くなったことがわかっている。

この危機に対する各国の対応には、移動、表現、集会の自由を含む権利の包括的な制限が含まれている。国際人権法は、公衆衛生に対する重大な脅威があるときや国の存在を脅かす緊急事態の際には一部の権利の制限が正当化されうることを認めている。しかしそのような制限は法的根拠を持ち、絶対に必要で、科学的証拠に基づいていなければならない。また適用が恣意的または差別的であってはならず、期間が限定され、人間の尊厳を尊重し、再検討の対象となり、目的の達成のために見合ったものでなければならない。

新型コロナウイルスの拡散を効果的に防ぐには、各国政府は市民に最新の情報を提供し、検査、治療、ケアを阻む障壁を減らす必要がある。危機の存在を否定した政府もある一方で、情報や医療へのアクセスを拡大した政府もある。

そのような制限が新型コロナウイルス感染症への対応を妨げるという批判を受け、エチオピアはオロミア州西部での電話とインターネットの全面的な遮断を3カ月ぶりに解除し、住民が命に関わる情報にアクセスできるようにした。ポルトガルでは、政府は在留許可や難民認定を申請中の人を6月30日まで永住権を持つ人と同じように扱い、国の医療制度も使えるようにすると発表したパキスタンのある政府関係者は、新型コロナウイルス感染症の流行中は医療への壁を取り払いトランスジェンダーの人たちを助けると公の場で約束した。

人権を尊重した危機管理を行うためには、新型コロナウイルス感染症による経済的悪影響に対処する際にも国際人権法の基準に沿って必要な措置を取らなければならない。新型コロナウイルス感染症の結果として採用された経済プログラムの多くは非公式経済で働く人を軽視しているが、危険にさらされている人たちに食料や水や住居を提供するために重要な手段を講じた国もある。

南アフリカでは中央政府が地方自治体に対し料金未払いを理由に給水を停止するのを止めるよう求め、非公式の集落など水を必要としているコミュニティにタンカーで水を配っている。アルゼンチンオーストラリアアイルランドほか多くの政府は新型コロナウイルス感染症対策の中で住居が果たす役割を認め、立ち退きを止めるための措置を発表した。

乱暴な政策を定めた政府もある中で、必要に見合いバランスのとれた危機対応をしようとした政府もある。移動制限があるため、イングランドとスコットランドの医療当局は早期中絶薬を自宅で使用することを認めた。隔離やロックダウンを徹底させる治安部隊の権利濫用を野放しにした政府もある一方で、事件を起こした者に対して適切な措置をとった政府もある。ウガンダでは警察が、外出禁止令に違反したとして女性に服を脱がせた南アフリカでは、ロックダウンの執行を任された警察が男性を自宅前で撃って子どもたちがけがをした。どちらの事件についても、当局は問題の警官を訴追し罰すると約束した。

新型コロナウイルス感染症の急速な拡大との戦いでは社会的距離の確保(ソーシャル・ディスタンシング)が鍵となることが広く認められている。しかし各国政府はロックダウンや自宅待機命令に伴う損害に対処する政策をとる必要がある。そのような政策には社会心理的な––精神衛生のための––サポートの拡大、子どもが休校中でも学習を続けられるようにすること、家庭内やマイノリティに対する暴力が増加している問題に取り組むことなどがある。

フランスは家庭での暴力の被害者のために2万泊分の無料宿泊を提供し、薬局で暗号を言って助けを求めるよう呼びかけている。ヨーロッパの感染拡大の中心であるイタリアでは、精神面をサポートする全国的な事業を政府が開始した。オーストラリアでは「コロナウイルス健康サポートライン」という専用回線の設置が発表された。新型コロナウイルスの伝染についてのゼノフォビア的な言説が広まる中、英国の警察はムスリム住民が故意に新型コロナウイルスを広めたとして中傷しようとする動きについて捜査を開始したと伝えられている。

チェックリストに含まれている有益な政策の例は、各国政府が採用するべき例してではなく、世界的流行に対処する中で各国政府が選ぶことのできる選択肢を例示する目的で挙げられている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「どの対応も完璧ではないが、世界各地の政府が公衆衛生を守り人権を尊重する措置をとっていることを認めるのが重要である」とクマールは述べた。「それでも、もっとも危険にさらされた人々を引き上げるための熟慮した努力をしない社会は、新型コロナウイルス感染症が抑えられた後も立ち直るのが難しくなるだろう」。

 

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