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ヒューマン・ライツ・ウォッチの政府首脳宛 公開書簡

2008年北京オリンピックの開閉会式への参加について

2008年4月9日  
 
2008年北京オリンピックの開閉会式への参加の件  
 
ファクシミリにて  
 
拝啓

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2008年北京オリンピック開閉会式に関して、当書簡をお送りいたします。8月8日が近づくにつれ、世界の注目が、スポーツ競技だけでなく、中国の人権状況に集まっています。中国における人権状況が悪化の一途を辿り、近時のチベット騒乱についても憂慮すべき事態となっている今、貴殿のオリンピック開会式・閉会式に参加するか否かの決断が、政治的に大きな影響力を持ちます。よって、貴殿に対し、オリンピック開催国選考の際の中国政府の公約を含む中国の人権状況の具体的な改善が見られることを条件に参加を決定されるよう要請します。  
   
中国政府は、過去20年に渡り、結社、表現、宗教活動などの基本的自由を恒常的に抑圧してきました。この間、いくつかの点で改善があったことは確かです。しかし、この3年間、人権状況は確実に悪化しています。すなわち、著名な人権活動家が逮捕され、NGOへの規制が強化され、インターネット検閲は拡大し、少数民族(特にチベットと新疆)に対する政策が強圧的になりました。  
 
昨年、中国政府は、オリンピック開催の直接の結果としての人権侵害を犯しました。報道の自由を抑圧し、北京のスポーツ施設建設に従事する出稼ぎ労働者の劣悪な労働環境を看過し、オリンピックを批判する者を自宅軟禁したり国家転覆罪で拘留したり、農村からの嘆願者や物乞いをはじめとする最貧層の弱者を北京から追放したりしています。  
 
さらに3月半ばから、広く報道されているとおり、中国政府は、チベットでの抗議行動に対して、過度の有形力を行使して対応をしております。人民軍は暴力的に抗議者を解散させ、何百人も恣意的に逮捕し、被逮捕者の所在や安否を開示することを拒んでいます。警察と人民軍による過度の有形力の使用、被拘留者への拷問、平和的抗議行動の禁止・抑制、寺院・村の軍事的封鎖、広範囲の家宅捜査、大規模逮捕、聖職者の迫害などについて、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、多くの信頼すべき報告を得ています。こうした行動様式は、近年、特に少数民族地域で、中国当局が抗議行動に対して行った一連の人権侵害の典型的なパターンと同じです。中国政府は、同地域に状況を調査する第三者が入ることを許可せず、逆に外国人記者をたちどころに追放し、すべてチベット人が悪いかのように情報操作を続けており、これらの報告の裏づけをとるのは容易ではありません。ただし、中国政府も四川省ではデモ参加者4人銃撃したと認めています。  
 
中国政府の人権無視の姿勢は、その外交にも現れています。国連安全保障理事会では、人権侵害国の責任者に対するターゲットを絞った制裁決議案に対し、繰り返し拒否権を発動し、また、国連人権理事会では議論を妨げようとしました。さらに、重大な人権危機の解決のために、自らの影響力を活用することを拒んでいます。中国政府は、スーダン政府への影響力を行使して、UNAMID(国連AU合同ミッション)部隊のダルフール展開を容認させましたが、部隊の十全な配備をスーダン政府が妨害している現在、さらなる圧力が必要です。また、スーダンが、部隊の完全な配備やダルフールでの民間人への攻撃の停止などの国連安全保障理事会決議及び国際法に基づく同国の義務を順守するよう、中国は、さらに働きかけるべきです。  
 
総じて、これらの現状は、オリンピック大会に先立って中国が公約した広範な人権状況改善と、大きくかけ離れていることが明らかです。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチはオリンピック大会ボイコットを主張するものではありません。しかし、オリンピックが、中国の人権状況に世界の注目を集め、また、中国政府が目に見える改善を示す格好の機会と捉えております。各国の国家元首や政府高官が開閉会式に参加するか否かは、中国政府にとって重要なことであり、同国政府に対し、これからの数ヶ月間に事態を改善するよう強く求めるためには、依然として有効なレバレッジジ(影響力ある手段)です。中国政府が、前例のない100人もの首脳たちを招待したという事実は、開閉会式を政治的イベントとして利用し、国内外での評価を高めようとする意図を表しております。  
 
問題は、貴殿がこうしたプロセスに参加したいのか、にかかっています。中国政府が以下の各行動を取ることを貴殿の参加の条件にされるよう要請します。
  • 3月10日以来チベットで起きている事件について、国際的第三者機関(国連人権高等弁務官事務所による調査が望ましい)による調査を許可すること。調査では、被拘留者へのアクセス、過度の有形力の使用、超法規的処刑、被拘禁者への拷問、恣意的な逮捕、中国国内法でも許されている抗議行動と暴動の同一視、表現・集会・結社・宗教の自由侵害、などの問題を対象にすべきである。調査結果はオリンピック開会前に公表されるべきである。  
  • オリンピックに先立ち報道の自由を実現するという公約に沿い、諸外国メディアにチベット地域での取材を許可すること。そして、当該報道の自由を、オリンピックの後も永続させ、中国国内ジャーナリストにも拡大すること。先頃、外国メディアを対象に、政府統制下のツアーが実施されたが、これを真の報道の自由の証しとすることはできない。実際、このツアーに参加した記者たちは、移動が厳重に監視され、報道が政府関係者によって制限されていたとコメントしている。  
  • 自宅軟禁などの超法規的手段や国家転覆罪(5年以下の懲役)での実際に起訴するなどの方法で、政府を批判する者や抗議をする者の口をふさぐこれまでのやり方を改めること。活動家・胡佳氏と楊春林氏は、公に人権を擁護し政府を批判したという理由で、国家転覆罪の判決を受け、それぞれ懲役3年半と5年を宣告された。  
  • スーダン政府に対し、政府軍とその協力民兵によるダルフール西部の一般市民に対する攻撃を即刻停止するよう、公に要求すること。UNAMIDが、迅速かつ妨害なくすべてのレベルで配備されるよう積極的に働きかけること。スーダン政府が中国の要求に沿わない場合には、国連安全保障理事会でのスーダン高官に対する制裁決議を支持すること。
 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、こうした改善を実現するために、今が決定的に重要な時期であると思料します。これらの改善が実現すれば、中国での、表現・結社・集会の自由、透明性の確保、法の支配など、基本的な人権の擁護に大きく貢献することになります。中国がこのような進歩を遂げることは、中国人民の利益であり、世界益でもあるのです。開閉会式への参加を取りやめる、或いはこれらの条件が満たされるまで決定を延期することで、貴殿は貢献できます。それにより、貴殿をはじめ各国リーダーがオリンピックに参加するか否かは、中国政府の決断に依るところとなるのです。  
 
敬具  
 
エグゼクティブ・ディレクター  
ケネス・ロス
 

 
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