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日本は、人権大国に

By 土井香苗 ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本駐在員

English-Speaking Union of Japan

2008年 6月 12日  
 
人権危機を伝えるニュースが毎日続く。近隣アジア諸国だけでも、アフガニスタンやスリランカの紛争で民間人が多数犠牲になり、ビルマやチベット、ウズベキスタンで政府への抗議行動が弾圧され、スリランカや北朝鮮、パキスタン、タイやフィリピンで人びとが政府や軍事組織に拉致・拷問・殺害され、ビルマでは軍事政権が法の支配を完全に無視した投票を人びとに強制している----21世紀を人権の世紀にというかけ声も、もはや単なる夢となってしまったようだ。

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日本政府はこうしたアジア地域の問題にどう対応しているだろう?残念ながら、多くの場合、曖昧な態度に終始してしまう。非難の声を上げるときも、対応は遅い。結局、自国政府の手で苦しめられている人びとを助けるため、日本が国際社会のリーダーシップを取ったことはほとんどない。(確かに、拉致問題で、リーダーシップをとって北朝鮮に圧力をかけている。但し、これは、普遍的な人権の保護というより、自国民保護の側面が大きい。その証に、日常的な人権侵害に苦しむ北朝鮮の人びとのために日本が声をあげたということはほとんど聞かない。)  
 
日本メディアに目を移そう。テレビ番組キャスターたちが、こうした人権侵害に「西欧政府」が抗議しています、と報道して涼しい顔をしているのに出くわすことも多い。まるで、人権侵害に抗議するのは西欧の仕事で、アジアの仕事ではありません、といった雰囲気だ。(確かに、国際的な人権侵害にあまり声をあげないのは、日本だけでなく、ほとんどのアジア各国政府に共通だ)  
 
経済面では、西側民主主義国の仲間として見られることを当然とする私たち日本人。でも、人権分野には無関心で、こうした国々に大きく水をあけられても気にしないのはなぜだろう。日本人に基本的な正義感がないなどというわけでもあるまいに。  
 
さて、人権の尊重とは、すべての人びとにとっての社会正義の実現を主張することに尽きるものではない。地域の安定に貢献し、日本の国益にもなる。例えば、多くの外交専門家は、日本の安全保障上の最大の懸念は中国と北朝鮮だと言い、その理由を、日本と基本的な価値感を共有せず、政府が安定的基盤を欠くので将来の対日政策の安定的な予測が困難だからだ、などと言う。でも、もし、中国や北朝鮮が、人権を尊重する国家で、すべての人びとが弾圧を恐れなくてすむ法の支配が行き渡り、(政治的に「微妙」といわれる問題も含めて)人びとが自由に問題を議論し解決策を見いだす表現の自由がある社会だったらどうだろうか?中国と北朝鮮は真の意味でより安定した社会になり、日本にとって、ずっと信頼できる近隣国となるだろう。  
 
日本は、人権の保護の実現を世界で追求するアジアのリーダー国になれる潜在的な力を持っている。もちろん、グローバルな人権の保護を訴えるからには、襟元を正す必要もでてくる。日本政府の人権状況も問われることになるからだ。でもそれは名誉なことだ。お互いの人権状況は見て見ぬふりをし、お互いの人権侵害を予防する役割も無視し合う関係のほうが不名誉だ。  
 
だが、日本政府は、長い間、世界各地で起きる人権問題に対し、非常に慎重な姿勢に終始してきた。戦争で打撃を受けた経済から復興し、アジアの希望の星として国際経済に再登場する過程で、日本政府は、相手国に住む個々の人びとの福祉よりも、経済的利益に主眼を置く傾向にあった。しかし、今や、日本は経済的に発展した。日本人も、経済的に裕福な暮らしをすることだけでなく、外国に住む人びとも含む人間の福祉というものに価値を置くようになってきた。また、日本が第二次世界大戦中に犯した残虐行為ゆえ、日本にはアジア近隣諸国の人権問題についてとやかく言う資格などないという人もいる。確かに、日本は過去と真摯に向き合い、償わなくてはならない。しかし、だからと言って、過去に恥ずべき人権侵害を犯したことが、今苦しんでいる人権侵害の被害者たちを見捨ててよいという理由にはなりえない。  
 
日本は、今こそ、外交政策を変更し、世界で、人権の保護をより公に、より声高に求める国になるべきだ。しかも、多くのアジア諸国そして一部のアフリカ諸国の最大援助国である日本は、格好の立場にある。被援助国は、日本の発言を、特に重みをもって受け止める。日本政府は、世界各国で苦しむ多くの人びとを助ける大きなレバレッジを潜在的に持っているのだ。私たち日本人は、日本政府に対し、持てるレバレッジを人権のために使うよう要求してくべきだ。そして、日本政府に、人権大国を目指して努力するよう求めようではないか。  
 
(著者はヒューマン・ライツ・ウォッチの日本駐在員)
 

 
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