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バングラデシュ:特殊部隊による殺戮を止めよ

援助国は緊急行動部隊に資金援助すべきでない

(ニューヨーク2008年8月11日)- 軍の後ろ盾を受けたバングラデシュ暫定政権は、バングラデシュ対犯罪特殊部隊が非合法殺人を次々と行っているのを止めるため迅速な行動を取るべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2008年6月1日以来、緊急行動部隊(RAB)及び警察の要員は、少なくとも50名の個人を非合法に殺害した嫌疑を持たれている。

" RAB及び警察による非合法殺人の明らかな証拠があるにもかかわらず、バングラデシュ暫定政権にはこの問題に対処するつもりは無いようだ。そればかりか、バングラデシュ治安部隊は、殺人を犯しながら罪を逃れ続けている。 "
ブラッド・アダムズ、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長
  

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「RAB及び警察による非合法殺人の明らかな証拠があるにもかかわらず、バングラデシュ暫定政権にはこの問題に対処するつもりは無いようだ。」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは述べた。「そればかりか、バングラデシュ治安部隊は、殺人を犯しながら罪を逃れ続けている。」  
 
緊急行動部隊RABの重大な人権侵害に対する国内外からの批判を受け、2007年と2008年初頭には、RABによる殺害は減少していた。しかし、最近数ヶ月、この傾向は突然逆転し、殺害が激増したとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。  
 
例えば、7月15日午後7時ころ、RABは、モシウル・アラム・センツ(Moshiul Alam Sentu)氏をダッカで拘束した。センツはバングラデシュ民族主義党の学生組織の活動家だった。センツの母親が、逮捕直後にあるRAB高官に連絡した際には、同人は、子息を虐待したりはしないと請け合ったという。しかし翌日午前4時頃、ダッカの南バリサル管区にある水田で、RAB隊員がセンツの遺体を投げ捨てているのが目撃されている。遺体の胸と足には、銃で撃たれた跡があった。首には酷い擦り傷が残り、しかも左腕同様折れていたようであり、拷問の可能性を示唆している。RABはその後「RABが武器を押収するためにセンツをバリサルにある隠し場所に連れて行ったところ、センツの仲間と遭遇、攻撃を受け、その際の銃撃戦に巻き込まれセンツは死亡した。」と発表した。  
 
「モシウル・アラム・センツやその他の者を殺害したRAB関係者らは、法の下、厳しく訴追・処罰されるべきだ。」とアダムズ局長は述べた。「RAB隊員らの地位に関わらず、法の下で処罰されるべきだ。さもなくば、RABは拷問と殺人を犯し続けるだろう。」  
 
2004年に設立されたRABは、ほどなくして、バングラデシュ当局が「銃撃戦に巻き込まれて死亡」とする多数の事件への関与で知られるようになった。過去4年の間に、RABの隊員は540名以上の人びとを殺害。ヒューマン・ライツ・ウォッチやその他の団体による調査は、「銃撃戦に巻き込まれて死亡」した事件の多くは、実際には、人びとを拷問の末に超法規的に殺害した上で、銃弾戦に巻き込まれたかのように偽装したに過ぎないことを示している。 (http://hrw.org/reports/2006/bangladesh1206/)  
 
遺憾なことに、バングラデシュ警察もRABの活動方法をまねている。警察も、過去数年の間に数百人もの人びとを殺害。2007年1月11日に国家非常事態宣言が発令されて以来、RAB及び警察は度々共同作戦を実行している。  
 
7月26日、非合法組織プルボ・ベンガル共産党(赤旗分派)の代表ミザナル・ラーマン・ツツル博士の母親は、息子ツツルがダッカ市でRABに拘束されたとメディアに発表した。そして彼女は息子が「銃撃戦に巻き込まれ」ることがないよう政府に強く申し入れた。しかし警察は、7月27日、母親が報道機関に発表をした翌日に、ツツルは同人の犯罪組織と警察との間の銃撃戦で死亡した、と発表した。  
 
暫定政権が発足して19ヶ月になる。暫定政権は、法の支配に基づく「健全で安定した民主制度」の確立に向け努力すると約束してきた。しかし、現政権が蔓延する不処罰を解決する措置を取らない限り、改革への努力は失敗に終わるだろう、とヒューマン・ライツ・ウォッチは警告した。  
 
「法秩序の維持を任務とする軍及び警察自体が法を無視する限り、バングラデシュで法の支配は実現しない。」とアダムズ局長は述べた。  
 
RABによる人権侵害の重大性に鑑み、米国及び英国は、対テロ作戦におけるパートナーとしてRABと公式に協力し任務を遂行することを拒否して来た。しかし、いくつかの国際機関及び外国政府は、最近になって、RABとの協力を開始あるいは検討しはじめている。バングラデシュのデイリー・スター紙及びニュー・エイジ紙によれば、7月中旬、米国国務省、国防省、司法省の高官代表団がバングラデシュを訪問し、RABと会談、将来の協力関係構築の可能性について話し合ったという。その他、RABは米国政府に対して装備と対テロ訓練の提供を求めたとも言われている。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、各国政府に対し、RABが、パターン化した組織的人権侵害行為を止め、内部の犯人を法の下に処罰しない限り、RABに協力をしないよう強く求めた。現時点でRABに援助を提供すれば、当該外国政府はRABの人権虐待を黙認することとなり、しかも、バングラデシュでの人権状況を改善するという援助国のコミットメントに重大な疑問を生じさせることとなる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。  
 
市民的及び政治的権利に関する国際規約やその他の人権条約の締約国たるバングラデシュは、深刻な人権侵害を徹底的かつ速やかに調査し、犯人を訴追し、仮に有罪の証拠があれば公正な裁判に関する国際基準に沿って犯人を処罰する義務を負うものである。ヒューマン・ライツ・ウォッチが知る限り、RAB隊員の誰一人として、他人の命を奪いもしくは拷問したことについて、刑事罰に処せられた者はいない。
 

 
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