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グルジア:国際機関はミッション派遣を

目的は事実調査と民間人保護

(トビリシ、2008年8月18日)-ロシア軍とグルジア軍双方が、南オセチア紛争で違法に武力行使をした証拠が多数ある。これは、国際事実調査ミッションをグルジアに派遣する必要性を強く示していると、本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。民兵による攻撃及び危機的な人道状況が現在も進行中であり、民間人をより効果的に保護するためにもミッション派遣が急務である。

" 民間人を保護し、避難民が帰還できるよう安全を確保するため、国際治安部隊の派遣が必要だ。加えて、国際機関は、事実を調査し、人権状況を報告し、違反行為を法に基づき訴追するよう当局に求めるため、事実調査ミッションを派遣するべきだ。 "
レイチェル・デンバー、ヒューマン・ライツ・ウォッチの欧州・中央アジア局長代理
  

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2008年8月7日、軍事衝突の勃発時、グルジア軍は無差別かつ過度に武力を行使し、結果、南オセチアで民間人らが死亡した。ロシア軍もまた、以降南オセチア及びゴリ地域での攻撃に無差別に武力を行使し、そして、戦闘地域から逃れようとする民間人の集団に明らかな狙い撃ちを行った。民兵たちは現在も略奪、焼き討ち、拉致を行っているが、こうした手法は民間人を恐怖におとしいれ、避難を余儀なくさせ、避難民の帰還を妨げるものである。  
 
「この紛争は、民間人に多大な被害をもたらしている。」とヒューマン・ライツ・ウォッチ欧州及び中央アジア局長代理レイチェル・デンバーは述べた。「民間人を保護し、避難民が帰還できるよう安全を確保するため、国際治安部隊の派遣が必要だ。加えて、国際機関は、事実を調査し、人権状況を報告し、違反行為を法に基づき訴追するよう当局に求めるため、事実調査ミッションを派遣するべきだ。」  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、欧州連合(EU)に対し、紛争当事者との合意の上で、民間人保護及び避難民の帰還を確保するため、警察と軍からなる欧州防衛庁ミッションを派遣するよう要請した。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは 、事実調査ミッションについて、国際社会に様々な選択肢があると指摘。最初のステップとして、欧州安全保障協力機構(OSCE)議長は、グルジア(南オセチアを含む)に、国際人権法の専門家のチームを含む特使団を送り、人道法違反の調査をすることなどが考えられる。  
 
加えて、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連に対していかなる事実調査ミッションがふさわしいかを評価するチームを送るよう求めるとともに、グルジア及びロシアの双方が締約国たるジュネーブ諸条約の第一追加議定書第90条に基づく国際事実調査委員会の設立の検討を行うよう求めた。こうした委員会が能動的に設立されるのは初めてのこととなるが、当該委員会は、この条約の規定に従い、ジュネーブ諸条約及び第一追加議定書の違反を調査する権限を持つ。  
 
ロシア軍による攻撃  
南オセチア及びゴリ地域に対するロシア軍による攻撃から逃れてきたグルジア系住民からの聞き取り調査の結果、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシア軍が無差別に武力を行使し、かつ、民間人の車列への狙い撃ちなど、民間人に対して明らかな狙い撃ちの攻撃をした状況をまとめた。民間人または民間施設に対して故意に武力を行使するのは戦争犯罪である。しかも、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、グルジア内の2都市でのロシア軍によるクラスター爆弾の使用を確認した。(http://hrw.org/english/docs/2008/08/14/georgi19625.htm)  
 
南オセチアにおける攻撃  
スラバ・メラナシビリは、南オセチア地方の首都ツヒンバリの北にあるグルジア系ケクビ村出身の32歳の男性であるが、彼はヒューマン・ライツ・ウォッチに、村が複数のロシア軍ジェット機に何回も爆撃されたと証言した。「8月9日か10日に、大規模な空爆が始まった。村役場と病院が爆撃された。空爆は昼夜の別なく行われた。ロシア軍機はグルジア軍が駐屯している可能性のある大きな建物を狙っていたようだった。」  
 
メラナシビリの家の隣にあった学校は爆撃された。しかし彼は、その学校にも家の近くにもグルジア軍は駐留していなかったと証言した。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチに「8月9日の爆撃で、叔父の近所の人が死亡した。叔父はその人を裏庭に埋葬した。」と語った。  
 
メラナシビリはケクビ村から8月12日に避難した。その時の恐怖を以下のように語った。「私たちはゴリにある村にたどり着くため、森の中を歩かなければならなかった。その後、グルジア軍が避難を助けてくれた。森の中を歩いている間じゅう空爆は続いていた。沼地にうつ伏せになって、何時間も這っていかなければならなかった。怖くて立ち上がれなかった。」と語った。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、8月8日に民間車で一団になって南オセチアから逃げてきた6人の民間人(出身の村はそれぞれ別)から聞き取りを行った。その車列はツヒンバリを迂回する道路沿いのエレドゥビ村近郊でロシア軍機の空襲を受けた。  
 
車数十台の列を組んで避難していた民間人たちは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、午後4時頃、5機のロシア軍機が隊列の上空に飛来、その後戻ってきて掃射を始めたのを見たと語った。テモ・カスラドゥゼはケメルチの村出身で、孫と一緒に逃げていた。彼は攻撃の様子を「私の車には5人乗っていた。突然爆発があった。多分4台か5台の車がやられた。怪我をした人も、死んだ人もいた。血が流れていた。」と証言した。3人の目撃者が、白のニバ車に乗っていた2人姉妹がその攻撃で死んだのを見たと証言した。3人によると、道路上には、何の軍事施設、兵員、軍事車両も無かったという。  
 
8月8日午後7時頃、テンギズ・マガルダデゼ(41歳、ケメルチ出身)は他の20人と一緒に、上記と同じ道路上でミニバンを運転していた。エレドゥビ内の主要幹線に曲がりこんだ時、マガルダデゼは車の前方20~25m位のところで3度爆発が起きたのを見た。マガルダデゼは、飛行機の爆音を聞いた覚えはないものの、爆発が3度立て続けに起きたことから、飛行機から掃射されたものと確信している。  
 
8月8日の夜、エムザル・バブツシドゥゼは、同バイパス道路上で3台の民間人車列をつくり、幾人かの民間人と一緒にピックアップ・トラックに乗っていた。ロシア軍の検問所の手前2km弱の所で、ピックアップ・トラックが被弾、運転手とただ一人の女性同乗者が死亡した。バブツシドゥゼはその砲弾はBMP-2歩兵戦闘車両から発射されたと考えている。人びとは、運転手と女性の遺体を他の車のトランクに入れ、まずゴリにある病院に搬送し、それからトビリシに向かった。  
 
ゴリ地域での攻撃  
ロシア軍は、ゴリ市及び同地域に前進中、家で避難しようとしていた民間人らを攻撃、殺害した。  
 
バシコ・テヴドラシビリは、ゴリ地域のメレチ村の行政官である。彼は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、ロシア軍がメレチ村に空爆を始めたのは8月9日の朝からだったと語った。最初の空爆で、家で寝ていた女性が死亡。村人たちが避難するため村周辺に集まり始めた頃、ロシア機が再び空襲して5発の爆弾を投下、5名が即死し、重傷を負った2名が後に死亡した。別の目撃者によると、少なくとも10名の民間人がその空襲で負傷、うち一発は、2つの民家を完全に破壊し、その他にも幾つかの家に多大な損害を与えたという。  
 
テヴドラシビリは、直後の惨状を「負傷者がたくさんいたので、その中から、少しでも生き残るチャンスがありそうな人を選んで救急車に乗せるしかなかった。死んだ人は庭に埋葬した。そして村から避難した。」と証言した。また、村にはグルジア軍の基地はなかったし、襲撃時にグルジア軍兵員がいたということもなかったと語っている。  
 
教師のヌヌ・チレイドゥゼは、プクヴェネシ村内及びその周辺の軍事目標にロシア軍が8月11日早朝に攻撃を行った結果、民家への二次被害が起きたため、同日、夫とともに村を逃れた。彼女は、夫や隣人達と一緒に避難したのだが、ゴリ地域の民間人は攻撃されていないというテレビのリポートを見てUターンした。しかし、サカシェチ村近くで路上を封鎖しているロシア軍に近づいたところ、車は銃撃された。夫は被弾し車はコントロールを失って戦車に突っ込んで止まったように思う、と彼女は語った。ロシア軍は、チレイドゥゼの背中に銃弾を2発撃ちこんだ。それから、彼女を野戦病院に連れて行って治療を受けさせた。彼女はその後病院から逃げ出したが、夫の消息につては不明だ。  
 
グルジア軍による南オセチアでの攻撃  
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、グルジア軍が、8月7日から8日にかけてツヒンバリ及びその周辺の村々を襲撃した際、無差別に武力行使し、多くの民間人犠牲者を出した上に大規模な破壊をもたらした状況の調査・とりまとめを続けている。  
 
「包括的な調査には時間がかかるが、我々は、グルジア軍による無差別攻撃を示す情報を集め続けている。」とデンバー局長代理は語った。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ツヒンバリ市とニズニ・グディアベル村及びケタグロボ村で、100名を超える人びとから聞き取り調査を行い、グルジア軍がグラド多連装ロケット砲及び戦車砲を無差別使用した実態を明らかにした。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ツヒンバリ市で、多くの民間施設が重大な損害を被ったのを確認した。例えば、病院、共同住宅、民家、学校、幼稚園、商店、役所施設、大学などである。(http://www.hrw.org/english/docs/2008/08/12/georgi19594.htm)  
 
グルジア軍は、8月7日の深夜近くに砲撃を開始し、夜通し攻撃を続けた。ツヒンバリ市で最も深刻な被害を受けたのは、市の南部、南東部、そして中心部だった。最初の砲弾が降り注ぐと、女性・子ども・老人を含む多くの住民は、身を隠すために地下室に逃げ込んだ。人びとはそこで2日間を過ごし、ロシア軍が市を完全に制圧した10日になって初めて地下室から出てきた。なかには、恐怖のあまり8月13日まで地下室に閉じこもっていた人びともいた。  
 
ツヒンバリ市砲撃で、民間人が犠牲者になった。グラド多連装ロケット砲から発射されたロケット弾のうち一発が、クラエバ通りにあるアニシム・ジャガエフ(74歳)の家を直撃したのは、その一例だ。彼の娘はヒューマン・ライツ・ウォッチに「砲撃の間に、ロケット弾が家に当たり、屋根に火がついたの。父は外に出てその火を消そうとしたわ。その時、もう一発のロケット弾が落下した。父はロケット弾の破片で大腿部に傷を負った。母が父を地下室に引きずり込み、その後数時間出血を止めようとした。でも、母は傷口を縛るものを何も持っていなかった。出血多量の父は、母の腕の中でゆっくりと死んでいった。」と語った。  
 
ツヒンバリ市の住民たちによると、グルジア軍が地上攻撃を開始した8月8日朝、周辺のオセチア民兵が民間人の共同住宅の中に防衛陣地を作ったという。グルジア軍はこれに発砲した。民兵は自動拳銃で武装していた。  
 
 
地域住民の話によると、次のような事件も起きた。8月8日午後3時30分頃、 ツヒンバリ市の西部ツセリニコフ通りの共同住宅に、1輌のグルジア軍戦車が砲弾を発射した。オセチア民兵の一団が近隣を通って撤退を開始し始めた後のことだった。6発の砲弾がその共同住宅に命中し、5つの住居が破壊された。その建物の住民たちは、ヒューマン・ライツ・ウォッチにこう語った。「私たちは地下室に駆け込んだ。でも、4階に住んでいた80歳位になる老人は、地下室に逃げ込むのに間に合わなかった。彼の部屋に砲弾が命中し、火を吹いた。攻撃が終わってから上がっていって見ると、老人は焼けて灰になっていた。私たちは庭に遺体を埋めました。」  
 
「私たちは民兵たちの顔を見知っている。だが、この攻撃は、民兵たちには何の損害も与えなかった。」近隣住民はヒューマン・ライツ・ウォッチにこう語った。  
 
オセチア民兵は合法的な軍事目標だった。しかし、国際人道法は、紛争の全当事者に対し、民間人及び民間施設に対する被害を避けるか最小限にする義務を課している。特に交戦当事者は、戦闘員のような軍事目標を人口密集地もしくはその付近に配置して民間人を危険にさらすようなことは、できる限り避けなくてはならない。  
 
しかしグルジア軍も、当該攻撃による民間人への危険を考慮する義務があった。仮に、攻撃で得られると考えられる軍事的効果よりも、民間人の犠牲が上回ることが明らかであれば、攻撃を回避する義務があった。  
 
そして村民によると、8月8日には、ツクヒンバリ市南西の人口約750人のケタグロボ村で、グルジア軍による攻撃の結果、少なくとも4名の民間人が死亡したという事件もあったという。ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員らは、その村の幾つかの家屋がグラド多連装ロケット砲及び迫撃砲で被弾しているのを確認した。村民たちは、ロケット弾が家に命中して火事になり、その結果、女性の老人が死亡したとヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。  
 
 
砲撃の後、グルジア軍歩兵は村に入り、民家の門と塀に銃弾を浴びせて民兵に降伏を呼びかけた。目撃者によると、アナスターシア・ジューヴァという女性の老人が、鶏にエサをやりに行っている時、流れ弾に当たって死亡したそうである。  
 
村民たちは、民兵たちは砲撃が始まる前に村を去って森の中に身を隠したので、当時、村に民兵はいなかったと主張している。  
 
少なくともグルジア軍歩兵の一部には、その村に民間人が残っていることを知らなかった者もいた。あるお年寄りの男性は「歩兵が庭に入ってきた時、彼らは老人妻がそこにいるのを見て驚いていた。」と語った。お年寄りによるとその兵隊は「あなたは砲撃の間中からずっとここにいたんですか?民間人は皆避難したと思ってました。」と言ったそうである。ヒューマン・ライツ・ウォッチが聞き取りを行った15名の村民のうち、民兵が残っていないか、武器がないかを捜して家宅捜索を行ったグルジア軍兵士が、残虐行為または品位を傷つける行為を行ったと述べた者はいなかった。  
 
村民たちは、さらに犠牲者がいるのかもしれないという不安を抱えたままである。マディナ(30歳)は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し「避難できたのが誰か、死んだのが誰か、よく分からないんです。村は事実上、人っ子一人いない感じだし、被害の実態が正確に分かるには時間がかかるでしょう。」と語った。  

 

 
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