東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
会長 橋本聖子 殿
拝啓 ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
私どもは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会におかれまして、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会とともに、日本のすべての人びとを性的指向や性自認による差別から守るLGBT平等法の制定をご支持くださいますよう要請いたします。
プライドハウス東京レガシーが10月にオープンし、11月には国際オリンピック委員会(IOC)バッハ会長が訪日するなど、世界の注目が日本に集まっています。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)は、日本が国内法を国際基準に適合させ、IOCおよび来日する多くの選手・関係者の期待に応えるまたとないチャンスです。
ご承知のように、オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」のひとつとして、性的指向を含む「あらゆる種類の差別」を明示的に禁止しています。新しいOECDの調査結果にはショックを受けております。先進国におけるLGBT包摂性に関する法整備ランキングで、日本はワースト2位でした(下図参照)。報告書は「LGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)を包摂する法律は、LGBTIの人びとを平等に扱う文化を形成するうえで特に重要だ。そもそも、性的マイノリティやジェンダーマイノリティを人権侵害から保護する、あるいは社会制度から排除しないと定める法律抜きで、その現状の改善は期待できない」と指摘しています。
この調査では、日本(34位)は、カナダ(1位)、フランス(3位)、オーストラリア(8位)、米国(13位)など、最近または今後のオリパラ開催国よりも低い評価となっています。LGBTの人びとを法律的に守ることができない現状は残念ながら、オリンピック憲章、オリンピック・アジェンダ2020、国際人権基準の要件を満たしておりません。
約2年半前の2018年10月、東京都はオリンピック憲章に沿って、LGBT等の人びとへの差別を禁止する条例(「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」)を制定しました。この条例は最初の第一歩として世界的に評価されました。そして無論今度は日本政府が、LGBTの人びとを守るLGBT平等法を制定することが期待されております。
東京2020大会ではマラソン、競歩、ゴルフ、フェンシング、サーフィンなどいくつもの競技が、北海道、埼玉、千葉、静岡、神奈川、宮城、福島、茨城など東京都外で開催されますが、LGBTの日本のスポーツファンやアスリート、外国からの訪問者は、差別を禁止する法律・制度で守られることを期待するでしょう。
2020年10月のプライドハウス東京レガシーのオープンに寄せたメッセージで、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は、この施設での活動が「成功し、東京大会のレガシーとなることを期待している」と述べておられます。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会にアドバイスを行う持続可能性や人権の専門家として、私どもは政府に対し、近年のオリンピック開催国のように、SOGI(性的指向と性自認)差別を禁止するLGBT平等法を制定し、もって、オリンピック憲章をまもり、国内法を国際人権基準に沿ったものにすることを強く求めております。
私どもは、2020東京大会に先立つ2021年1月開始の通常国会において、このような歴史的な法律が成立することを支持し、実現に向けて尽力いたします。本書簡への回答と私たちの取り組みへのご支援を賜りたくお願い申し上げます。
敬具
組織委員会人権労働・参加協働WGメンバー【五十音順】
ジャーナリスト・環境カウンセラー 崎田裕子
明治大学 経営学部 特任教授 関 正雄
「なくそう!SOGIハラ」実行委員会委員長 松中権
日本労働組合総連合会(連合)総合企画局 企画局次長 陳 浩展
ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表 土井香苗
シルバーバーチアソシエーツ株式会社 代表取締役社長(CEO)パトリシア バダー・ジョンストン
Field-R法律事務所 弁護士 山崎 卓也
CC:
日本オリンピック委員会 会長 山下泰裕 殿
日本パラリンピック委員会 会長 鳥原光憲 殿
参考送付:
国際オリンピック委員会 会長 トーマス・バッハ 殿
関係国会議員の皆様