10月31日から英国グラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)には、世界のリーダーたちが集まります。気候変動対策には一刻の猶予もありません。森林は炎に包まれ、都市は酷暑に襲われ、農地は乾き、海岸は巨大な台風に見舞われています。気候危機は世界中の人びとの生命と生活に深刻な打撃を与えているのです。各国政府が大胆に、そしてまた迅速に、温室効果ガス排出量の大幅削減に踏み切らない限り、状況は想像を絶するほど悪化する可能性があります。
近い将来、海面上昇や大規模な食糧不足により、何億もの人びとが住んでいる場所を追われかねません。ますます希少となる資源をめぐる紛争が指数関数的に増加し、暴力、敵意に満ちたナショナリズム、外国人嫌悪、強権的支配が助長される恐れがあります。とくに脆弱な状態にある人びとの権利を保護する国家の力は、深刻な打撃を受け、多くの場所で崩壊しかねないのです。
このようなディストピア的な未来を回避できるかどうかは、政府が人びとの権利を守るために何をするかに大きく掛かっています。熱帯雨林は炭素吸収にきわめて重要な役割を果たしていますが、世界各地でその保護を実現するためには、各国政府がすべきことは、その最も熱心で効果的な守り手である先住民や地域社会の権利を守らなくてはなりません。
石炭は温室効果ガス排出量の30%を占めています。脱石炭を実現するために、各国は、地域住民の健康な環境を享受する権利を守る規制を導入し、炭鉱や石炭火力発電所の大気汚染や水質汚染を止めなければなりません。同時に、クリーンなエネルギーよりも石炭のコストを相対的に高くする措置を実施すべきです。
選挙で選ばれた議員や産業界のリーダーに、より野心的な気候変動対策を求める人びとの意見をきちんと聞かせるために、各国政府はあらゆる人びと、特に世界中で増え続けている若い活動家たちの権利を保障し、温室効果ガス排出量の削減と、危険にさらされている人びとを守ることが待ったなしの課題であることを訴えることができるようにしなければなりません。
COP26では、大量排出量国が新たに重要なコミットメントを行うことが期待されています。しかし最も重要な問いにはおそらく回答が示されないでしょう。例えば、各国は森林破壊対策への支援を約束するでしょう。しかし、世界有数の熱帯雨林の破壊の主因である農産物の輸入を禁止するでしょうか? 化石燃料に対する対外援助の廃止を約束する政府もあるでしょう。しかしいくつの国がそうするでしょうか? 国内での排出削減努力を妨害し続ける化石燃料に対して国内の補助金も廃止するのでしょうか? 発展途上国の気候変動政策を支援するために、何十億ドルもの「気候資金(気候変動ファイナンスclimate finance)」をプレッジする国もあるでしょう。しかし、そうした支援が最も危険にさらされている人びとに届くような措置をとるでしょうか?
今週末からグラスゴーでこれらの問題に向き合う世界の指導者たちは、気候危機は人権危機であり、気候変動の抑制に向けた世界的な取り組みを進めるためには、人権を守ることが不可欠であることを理解すべきです。