(東京)- 安倍晋三総理大臣は、日・ASEAN首脳会議の期間中に行われる、ラオスのトンシン・タンマヴォン首相との首脳会談で、著名な社会活動家ソムバット・ソムポーン氏の強制失踪事件に懸念を表明すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナル日本、メコン・ウォッチ、エファジャパンそのほか日本のNGO2団体は、本日公開の安倍首相宛の共同書簡の中でこのように要請した。
2013年12月13日~15日に行われる日・ASEAN首脳会議は、ソムバット氏の拉致・強制失踪事件が起きてちょうど1年目にあたる。2005年のマグサイサイ賞(地域指導部門)の受賞者である同氏は、2012年12月15日、ラオスの首都ビエンチャンにて、警察署の外にある検問所で当局により拉致された。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は「ソムバット・ソムポーン氏拉致事件からちょうど1年。安倍首相は、本件について公式の場での沈黙を続けた日本政府の姿勢を改めて、ラオス政府に対し、ソムバット氏の消息を明らかにするよう求めるべきだ」と述べる。「日本はラオス最大のドナー国で発言力がある。安倍首相はこうした影響力を行使し、ラオス政府首脳に対し、ソムバット氏事件の真相解明を求める訴えを無視することを止めるよう、強いメッセージを送るべきだ。」
ソムバット氏の強制失踪事件について、域内や国際社会で説明を求める声が広がっているにもかかわらず、ラオス政府はまともな捜査を実施していない。ソムバット事件に対して日本が公的な場で沈黙を続けることは、ラオス政府の無対応ぶりを容認するとの誤ったサインを送ることにほかならない旨、書簡に署名した団体は指摘した。
日本政府は、自由、民主主義、基本的人権、法の統治といった基本的価値に立脚した外交を目指すと宣言している。これに沿ったかたちで指導力を発揮し、ラオスをはじめASEAN加盟国に対し、強制失踪からの保護は、当該政府だけではなく、広く国際社会の懸案事項であるとのメッセージを伝えるべきだ、と署名した団体は述べた。
アムネスティ・インターナショナル日本の若林秀樹事務局長は「日本は他のドナー国と協働し、ラオス政府がソムバット事件のあらゆる情報を提供するまで、本件を提起し続けるとの姿勢を明確にすべきだ」と指摘。「さらにラオス政府には、ソムバット氏の強制失踪に関与した者全員を訴追することが求められる。」