(ヤンゴン)— ミャンマー当局は、ジャーナリストに対して国軍での経験を語った元子ども兵士の有罪を取り消し、釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。3月28日、ダゴンセイカン郡区裁判所はアウンコートゥエ氏に刑法第505条(b)違反で懲役2年を求刑した。その過度に緩やかな規定は、表現の自由を抑えるためにこれまでも頻繁に用いられてきた。
ミャンマー治安部隊はアウンコートゥエ氏を2017年8月18日に逮捕した。氏はこれに先立ち、ラジオ・フリー・アジアでのインタビューで、2005年に14歳で国軍に強制入隊させられた経過を詳しく述べていた。他方で氏に対し、ある国軍将校が刑法第505条(b)違反だとの告発を行っている。公判中に、ミャンマーの国璽を冒涜したとして最大3年の刑が追加される可能性がある。
「アウンコートゥエ氏の訴追は、不正を暴く者の口を塞ごうとするミャンマー国軍のやり方の徹底ぶりを示している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「元子ども兵士は支援と社会復帰の対象であるべきで、さらなる国軍の人権侵害にさらされるべきではない。当局は直ちに有罪判決を取り消し、身柄を釈放すべきだ。」
ラジオ・フリー・アジアのインタビューで、アウンコートゥエ氏はヤンゴン市内の駅で拉致され、軍に入隊させられた経過を詳しく述べた。2007年、氏は2人の子ども兵士とともに軍を脱走した。3人は脱走中にオートバイを奪おうとして所有者を殺害したとの容疑に問われた。当時未成年者の3人全員が殺人罪で逮捕され、死刑判決を受けた。アウンコートゥエ氏は軍刑務所に何カ月にもわたり収容され、最終的に自白の調書に署名したが、その後、殺害にはかかわっていなかったと主張した。刑は10年に減刑され、氏は2017年7月に釈放された。刑法第505条(b)違反容疑で逮捕されたのはその1カ月後のことだった。
報道によれば2009年、家族は氏の国軍への徴兵について国際労働機関(ILO)に苦情申立てを行った。2007年のILOとミャンマー政府との合意事項に基づき、アウンコートゥエ氏は、自身の徴兵への苦情申立てにかんし、「司法的または報復的措置」から継続的に保護される権利を得ている。
刑法第505条(b)は、活動家や政府批判を行う人びとを標的に歴代政権が用いてきた条文で、「公衆に恐怖や警戒心を抱かせる意図をもつか、それらを抱かせうる言説や流言、報道を行い、公表し、あるいは流通させる」者に対し、最大2年の刑を科す。国際法は公安維持のために言論を制限することを認めてはいるが、国連規約人権委員会(HRC)は、そのための規制措置は「それがもたらす保護機能の達成にとって適切である」とともに「それがもたらす保護機能を達成しうる措置のなかで最も侵入的でない方法」でなければならないと定めている。当該条文の過度に緩やかな規定は、許される制限措置の範囲を超えており、非暴力表現の抑圧を促進するものである。
刑事訴訟法上の「非保釈対象」罪であるため、刑法第505条(b)は裁判前の長期勾留と人権侵害を促すものだ。政府はこの条文を廃止するか、表現の自由の保護にかんする国際基準と合致する内容に改正すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。
アウンコートゥエ氏に有罪を言い渡した後、裁判所は、氏が2008年憲法の印刷版を踏みつけた際にミャンマーの国璽を毀損したとして、連邦国璽法違反で罰金刑を追加して科すことになると宣告した。同法違反は最大3年の刑となる。このほか氏は2月に、主任裁判官を批判したとして刑法第228条の法廷侮辱罪で6カ月の刑を宣告されている。過剰な容疑と厳しい判決は、政府が抑圧的な法律を使う回数を増やし、政府や国軍を批判したと見なされる非暴力表現を理由に、ジャーナリストや活動家、政府に批判的な人びとを訴追する動きを反映している。
さらに家族の話やニュースによれば、当局は被告人尋問当日に裁判所外で非暴力の抗議行動を行った、アウンコートゥエ氏の支持者も標的としている。支持者2人が刑法第505条(b)だけでなく刑法第153条など、様々な容疑で起訴されている。後者は暴動を計画的または故意に起こした者を最大1年の刑とする条文だ。このほか4人に逮捕状が出ており、アウンコートゥエ氏の姉妹のうちの1人も含まれる。非暴力の抗議行動に参加したとして個人を訴追することは、非暴力集会を開くという国際的に保護された権利の侵害であり、一連の起訴は直ちに取り下げられるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
ミャンマー国軍は、陸軍への子どもの採用を減らす取り組みで近年成果を上げているが、採用自体は今も続いている。12月、国連事務総長は、ミャンマーでは2017年1月~6月の間に子ども兵士の採用が49件確認されるとともに、連隊に配属された子ども兵士からの苦情申立て約100件の調査が進められていると報告した。政府は国軍内に残る子ども兵士すべてを釈放すること、また起草中の子どもの権利法に子ども兵士の採用を犯罪とする条文を加え、採用を行った文官と武官を訴追し、未成年の被害者を保護することを求められていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
「アウンコートゥエ氏は軍に強制入隊させられたことを話したために刑務所に送られた。残酷なまでに皮肉な事態だ」と、前出のアダムズ局長は述べた。「被害者を沈黙させることは、子ども兵士を特定し、こうした人権侵害を行った人びとを探し出すという政府の公約に重大な疑義を生じさせるものである。」