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北朝鮮帰国事業:「地上の楽園」宣伝の被害者らが司法救済を求める

数十万人が日本への帰国を阻まれたまま

Escapees from North Korea and their supporters march to the Tokyo District Court to file a lawsuit against the North Korean government for violating their human rights, August 20, 2018.  © 2018 The Asahi Shimbun via Getty Images 

北朝鮮は「地上の楽園」という虚偽宣伝が行われた「北朝鮮帰国事業」。この事業で受けた被害について5人の脱北者が損害賠償を求めている裁判で10月14日、東京地方裁判所で歴史的な口頭弁論が行われる予定だ。5人の原告は2018年に北朝鮮政府を相手に訴えを起こし、以来口頭弁論が行われるのを待っていた。

1959年から84年までに、約9万3,000人の在日コリアンと日本人がいわゆる「帰国事業」のもとで日本から北朝鮮に移住した。北朝鮮政府は、その意を受けた朝鮮総連を通じ、北朝鮮が「地上の楽園」であり、「衣食住など生活に必要なものはすべて保証される」などと宣伝した。

北朝鮮政府が「帰国事業」を推進した真の狙いについて原告らは、北朝鮮政府は労働不足の解消のため、そして、大半が朝鮮南部(現在の韓国相当地域)に出自を持つ在日コリアンに北朝鮮への移住を奨励することを通じて北朝鮮の社会主義体制の政治的優越を示すためだったとする。「帰国事業」の船に乗って北朝鮮に渡った人々はすぐに(多くは到着時に)、北朝鮮政府の約束が虚偽であったことに気づいたが、人々が日本に戻ることを北朝鮮政府が許すことはなかった。

国連の北朝鮮の人権に関する調査委員会は2014年の報告書で、北朝鮮政府当局が「人道に対する罪」を犯したと認定した。調査委員会は「人権侵害行為の重大性、規模、本質において、現代世界において他の比類のない国家」であると断定した。しかし責任追及(アカウンタビリティ)は困難を極めており、本訴訟は北朝鮮政府による人権侵害のサバイバーが司法救済を試みている世界でも数少ない例のひとつである。

岸田文雄新首相は5人の勇気ある原告の声に耳を傾け、北朝鮮に残る「帰国事業」被害者らが日本に戻れるよう、金正恩総書記に強く要求するべきである。北朝鮮国内に囚われて出国できず苦しみ続けている「地上の楽園」事業の直接の被害者及びその子孫たち数十万人がその機会を待っている。国際社会はこの長きにわたる悲劇に目を向け、被害者救済を支援すべきだ。

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