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Ko Jimmy and Phyo Zeya Thaw. © 2006/2012 AFP via Getty Images

(ニューヨーク)ミャンマー軍は2022年6月3日、著しく不当な非公開裁判により控訴が棄却された4人の死刑執行を行うと発表したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチが本日発表した。活動家のチョウミンユー(通称「コー・ジミー」)氏と元NLD議員のピョーゼーヤトー氏は、ミャンマーが2014年に制定した、対象範囲が過度に広い「反テロ法」に基づき軍事法廷で裁かれ、1月21日に死刑判決を受けた。

ミャンマーの軍事法廷では、2021年2月の軍事クーデター以降、欠席者41人を含む114人に死刑判決が下されている。国際連合(UN)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、および関係各国政府は、ピョーゼーヤトー氏とコー・ジミー氏を含む不当に投獄されたすべての人びとを直ちに釈放し、死刑判決をすべて減刑するよう、軍事政権に強く働きかけるべきである。

「ミャンマーの軍事法廷が基本的権利を無視していることは、ピョーゼーヤトー氏とコー・ジミー氏に対する茶番劇じみた裁判と死刑判決にはっきり表れている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのミャンマー担当調査員マニー・マウンは述べた。「このような即座に結果を出す非公開法廷のねらいは、軍に異を唱える反体制派をことごとく震え上がらせることにある。」

2021年10月24日、ヤンゴン市の北ダゴン郡区でコー・ジミー氏(52歳)は兵士たちに逮捕された。当局は2021年2月13日に、反テロ法上の犯罪である暴動扇動と「テロ」に参加した容疑で逮捕状を出していた。家族によると、兵士たちは逮捕時に氏を激しく殴りつけ、拘束中には拷問を行った。

11月18日、兵士と警官がヤンゴン市のダゴンセイッカン郡区の集合住宅を家宅捜索し、ピョーゼーヤトー氏(41歳)を逮捕した。軍事法廷は、元国民民主連盟(NLD)議員でヒップホップ・アーティストの同氏を、親国軍派を標的とし、死者を出した銃撃事件を首謀したとして、反テロ法および公有財産保護法違反で起訴した。

国軍報道官のゾーミントゥン少将は、この男性2人は「刑務所の手続きに従って絞首刑にされる」と発表したが、処刑日は決まっていないと付け加えた。また、国軍の情報提供者とおぼしき人物を殺害したとして有罪判決を受けた、フラミョーアウン氏、アウントゥラゾー氏にも絞首刑にすると述べた。政治囚支援協会(AAPPB)によると、国軍はピョーゼーヤトー氏とコー・ジミー氏の所在を明らかにしておらず、逮捕以降の2人の足取りは途絶えている。

ピョーゼーヤトー氏とコー・ジミー氏は、政権が戒厳令を布告した郡区で逮捕された。戒厳令を敷くことで、軍は行政権と司法権のすべてを当該地域の軍司令部司令官に移譲し、その大半が民間法廷では死刑にならない23の犯罪について、死刑を適用可能とした。

軍事法廷は、短期間かつ非公開な審理で被告人に死刑判決を下しており、控訴された人々から公正な裁判を受けるという基本的な権利を奪っている。軍事法廷での裁判にかけられる人びとは、どのような証拠があろうともほぼ確実に有罪判決を受けることになる。一般市民や国際社会による監査にもさらされない。ミャンマー治安部隊は、クーデター後に拘束した多くの人びとに対して、頻繁な殴打を含む拷問をはじめとする虐待行為を行なっている

2021年5月、ミャンマー軍は、反対勢力の国民統一政府(NUG)、その立法機関である連邦議会代表委員会(CRPH)、およびその民兵組織を反国軍運動を扇動の疑いで、「テロリスト集団」に正式に指定した。そのねらいは広範な弾圧の正当化と、クーデターに反対する活動への支援の全面的な犯罪化にあると思われる。2021年8月、軍の統治機関・国家行政評議会の議長であるミンアウンフライン上級大将は、反テロ法を改正した。これによりクーデターに反対する活動は、暴力行為と平和的抗議活動は区別しない一律の厳罰化と、被告への立証責任転嫁が実現された。

戒厳令の規定によれば、国家行政評議会議長は死刑判決をすべて承認する義務がある。また、軍事法廷が示した判断や有罪判決には「控訴ができない」との定めもある。死刑判決を受けた被告に唯一残された手段は、有罪判決から15日以内に判決の取り消しまたは刑の軽減を「軍政」議長に申し立てることだ。この申請は、弁護士ではなく、刑務所職員を通じてのみ行うことができると、ラジオ・フリー・アジア(RFA)は報じている。ピョーゼーヤトー氏とコー・ジミー氏の裁判に詳しい情報筋によると、二人の家族は、軍がメディアに発表するまで、この申し立て手続きのことを知らなかった。

国連のステファン・ドゥジャリック報道官は、ミャンマー国軍が反体制活動家の死刑を行うと決定したことに「大きな衝撃を受けている」と述べた。「これは世界人権宣言の第3条に規定されている、生命、自由および人の安全に対する権利のあからさまな侵害である」と指摘した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、いかなる状況においても死刑に反対しており、ミャンマーに対して、死刑制度の廃止を長年求めてきた。死刑の特徴はその残酷さと究極性と、恣意性、偏見、誤謬の問題がが必ずつきまとう点にある。

2021年2月のクーデター以来、軍の治安部隊は大量虐殺、拷問、恣意的拘禁、民間人への無差別攻撃を行っており、これらは人道に対する罪や戦争犯罪に該当する。治安部隊はこれまでに、少なくとも130人の子どもを含む1,800人以上を殺害し、13,000人以上を恣意的に逮捕してきた。

オーストラリアカナダ欧州連合(EU)英国などを含む死刑廃止国、ならびにASEAN加盟国は、不当に拘束されている人びとの全面釈放と死刑判決の減刑を求めるべきだ。すべての関係政府は、ミャンマーの外貨収入に対する制限強化をはじめとする、国軍高官への対象限定型制裁を実施または強化するための、より強力で協調的な取り組みに合意すべきである。

「軍は、形だけの軍事裁判を実施した後、コー・ジミーとピョーゼーヤトーの両氏への死刑執行を行うと脅迫している。これは今すぐ止めさせなければならない」と、マニー・マウン調査員は述べた。「関係国政府は、一丸となって執行停止を強く求めるとともに、不公正な裁判に基づいて処刑を実施すれば、報復を必ず受けることを明確にすべきである。」

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