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日本の性同一性障害特例法の改正、自己決定権に基づくべき

不妊手術要件は違憲となったが、国会はその他の過酷な要件もすべて排除すべき

東京トランスマーチの参加者、2023年3月31日。 © 2023 Yuichi Yamazaki/AFP via Getty Images

日本の国会では、憲法違反とされた性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害者特例法)の改正の議論が行われている。

日本の最高裁判所は昨年10月、トランスジェンダーの人々に対する不妊手術要件は憲法違反であると決定を下した。これを受けて、国会では、戸籍上の性別の変更手続きを定める性同一性障害者特例法の改正が議論されているが、長期の待機期間やホルモン治療の要件化など、問題のある提案がなされている。

トランスジェンダーの医療・健康に関する世界的な権威の組織は先日、戸籍上の性別変更に医学的要件を入れてはならない、と超党派のLGBT議員連盟に書簡を送付した。「トランスジェンダーの人々にホルモン療法を受けることを要件とするよう定めるという誘惑に抗っていただくよう、貴殿をはじめとする皆様に強く求める次第です」と世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会(WPATH)の書簡には述べられている。「トランスジェンダーの人びとのなかには、ホルモン療法がヘルスケアにとって欠かせない人びとも存在しますが、一方、ホルモン療法を希望しない、あるいは、必要としない人びとも存在します」とWPATHは指摘し、「ホルモン療法を法律上の性別認定の条件として義務づけることは、手術要件と同様、『強制』にあたる」とも指摘している。

2004年の性同一性障害者特例法の施行以来、日本のトランスジェンダーの人々は、法律上の性別(戸籍上の性別)の変更を希望する場合、家庭裁判所の審理を請求する必要がある。さらに、医師の診断書が必要な他、さらに不妊手術を受けている必要があった。また、未婚であり、18歳未満の子どもがいないことも要件となっている。この法律は、トランスジェンダーの人々にとって重大かつ屈辱的な障壁であるとともに、日本政府が世界に対して行ってきた人権へのコミットメントに反している。

国会は、戸籍上の性別変更の5要件をすべて撤廃するべきである。そして、新たにトランスジェンダーの人びとの個人の権利を尊重する自己申告型の簡易な行政手続を導入する法律を制定し、先日新法を成立させたドイツなどの国々と日本も並ぶべきである。WPATHの発行しているケア基準では、性別変更に関する医療プロセスと法的手続きは分離すべきであり、トランスジェンダーの人々への医療は、それを必要とする人々に提供されるべきものとされている。

先日の岸田文雄首相の「ジェンダーアイデンティティは多様であり、人それぞれ異なるものである…自己のジェンダーアイデンティティを否定されるようなこともあってはならない」という発言が強く響く。日本は、トランスジェンダーの人びとをしっかりと法的に守る法改正を行う絶好の機会を手にしているのである。

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