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今も続く日本の「人質司法」による人権侵害

世界えん罪の日に新聞広告を掲載

元プロボクサーの袴田巌さんは、1966年に一家4人殺害の罪に問われ1968年に死刑宣告されたが、2024年9月26日に再審無罪となった。再審判決当日、静岡地方裁判所に向かう姉のひで子さん(C)。 © 2024 Philip Fong/AFP via Getty Images

「世界えん罪の日」である10月2日、ヒューマン・ライツ・ウォッチと一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパンの共同プロジェクトである「ひとごとじゃないよ!人質司法」は、人権を侵害し、日本各地で数多くのえん罪を生み出し続けている「人質司法」について社会の関心を高めるため、新聞広告を掲載した。

橋口幸生さんと岩下智さんがプロボノにて本広告を制作して下さった。広告本文:犯人を絶対に逃さない。そんな正義感が暴走した結果、起きるのが「人質司法」です。留置場や拘置所に閉じ込める。家族や友人、職場と連絡を絶つ。いつ終わるとも知れない獄中生活の中、「自白しろ」と迫り、応じさせる。そんな風にして、数多くのえん罪がうみだされてきました。人質司法を止める方法は、ただひとつ。この問題に関心を持ってください。そして、司法制度見直しへの世論を高めてください。本日10月2日は世界えん罪の日です。ひとごとじゃないよ!人質司法 © Yukio Hashiguchi and Satoru Iwashita

本広告では、いつ終わるとも知れない獄中生活の中、勾留中の被疑者が当局により「自白しろ」と迫られ応じざるをえず、数多くのえん罪が生み出されてきたことや、「人質司法」を止めるため、司法制度見直しへの世論を高める必要性などを訴えている。

「人質司法」は、刑事事件の被疑者・被告人の適正手続と公正な裁判を受ける権利を侵害している。当局は被疑者・被告人を長期間、時には数カ月から数年にわたり拘束する。自白しない場合は特に長く拘束されうる。起訴前の勾留期間中、当局は過酷な取調べを行い自白を強制する。取調べに弁護人が立ち会うことはできず、憲法で保障されている黙秘権を行使しても取調べは止まらない。

袴田事件はこの実務の危険性を浮き彫りにしている。元プロボクサーの袴田巌さんは、一家4人殺害の罪に問われ1966年8月18日に逮捕された。警察と検察による過酷な取調べにより、逮捕の20日後に自白した。強制された自白に基づき袴田さんは起訴され、その後死刑を宣告された。袴田さんは無罪を主張し続け、逮捕後58年となる2024年9月26日、再審無罪となった。

今回の新聞広告には3,477個の「正」の字が掲載されており、袴田さんが拘束されていた17,388日と、拘束が長引くにつれ正義が歪んでいくことを表している。

日本政府は「人質司法」を解消するため、これ以上待ってはならない。

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

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