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A cyclist holds up a poster reading in Vietnamese, "Shine your true colors," ahead of a bike rally in Hanoi, Vietnam, September 24, 2017.  © 2017 AP Photo/Hau Dinh

(バンコク) – ベトナム保健省は 2022 年 8 月 3 日に、同性愛者やトランスジェンダーであることは精神衛生上の問題ではないことを公式に認めたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。この決定により、ベトナムの保健政策は国際的な保健や人権の基準に沿ったものになる。

ベトナムの新たな指令(directive)は、「アメリカ精神医学会と世界保健機関(WHO)は、同性愛は病気ではないとを確認しており、したがって同性愛は『治す』ことはできないしその必要もなく、また転換させることができるようなものではない」と述べている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの保健・LGBTの権利担当上級調査員カイル・ナイトは、「性的指向および性自認が疾患ではないとベトナム保健省が認めたことは、全国のLGBT の人びとと家族に安心をもたらすだろう」と述べる。「ベトナムのLGBTの人びとは、差別を受けることなく健康に関する情報や社会福祉にアクセスする権利がある。保健省の新しい指令は正しい方向への大きな一歩となる。」

近年ベトナムは、LGBTの権利で一定の進歩を遂げてきた。2013 年に政府は、同性関係を、禁止される関係のリストから削除したが、この改訂は同性パートナーシップを法的に認めなかった。2015 年には国会が民法を改正し、トランスジェンダーの人びとが名前および法律上の性別を変更することを違法ではないとしたものの、法的な性別認定手続きの制定には至らなかった。

2016 年、ベトナムは国連人権理事会のメンバー国として、性的指向および性自認に基づく暴力と差別からの保護の必要性に関する決議に賛成票を投じた。代表団は投票前に支持声明を出し、「ベトナムが賛成票を投じた理由は、LGBTの権利に関して、国内・国際政策の変化があったこと」と述べている。

しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチが2020 年の報告書で発表したとおり、事実誤認及び否定的な固定観念が、ベトナムにおける LGBT の人びとに対する人権侵害を助長している。ベトナムでは、同性愛は診断可能な精神疾患であるという考えが広く浸透している。こういった誤解は、政府や医療専門家団体が、同性愛は人の経験の自然な差異(natural variation of human experience)であると、しっかりと一般に伝えていないことに根ざしている。

これまで研究者たちは、WHOが1969 年に初めて表明した同性愛診断をめぐる見解を、ベトナムが公式に採用していない旨を研究で指摘してきた。WHO が 1990 年に同性愛を精神疾患リストから削除したとき、世界各地の国々がこれにならったが、ベトナムはそもそも同性愛を公式に精神疾患としてリスト化していなかったとされており、結果として削除もされなかった。政府が同性愛を逸脱行為として扱い、著名な医学関係者たちが後押ししたことと相まって、同性愛は病気だという考えを多くの人が持つ結果となった。

同性愛に関する神話が広がった結果、子どもや若者にも影響が及んでいる。「子どもたちに対して異性愛者であれと、強いプレッシャーがかかっています」と、ハノイのある学校カウンセラーは語る。「同性にひかれることは、変えることができ、なおすこともできる、と常に聞かされているのです。」

2015年に人類学者のナタリー・ニュートンは、「ベトナムの新聞のアドバイス欄には、同性愛を身体の病気、遺伝性疾患、ホルモンの不均衡、または精神疾患としてきた医師や心理学者の意見も掲載されている」と記事に書いている。

国際保健機関や世界各地の多くの保健当局および医療専門家協会が、性的指向と性自認が精神疾患ではないことを確認する政策・方針や、LGBT に関する方針を公表しており、その数はいまでも増えている。2002年に「同性愛者は精神的に異常であるとか、何らかの疾患であるとはみなされない」と表明したタイ政府の公衆衛生省もそのひとつだ。香港、フィリピン、インドの全国的な医療専門家グループもそうした見解を確認のうえ、LGBT の人びとの差別なき健康への権利を支持している。

ベトナム保健省は国内すべての医療施設に次の指示を発出した:

  1. 医療施設の医師、職員、患者が同性愛、両性愛、トランスジェンダーについて正しく理解できるよう、情報の伝達・普及を強化する。
  2. 医療従事者は、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの患者の診察や治療を行う際の差別や偏見を避けるために、ジェンダーの平等と尊重を確保する必要がある。
  3. 同性愛、両性愛、トランスジェンダーであることを疾患ととらえないこと。
  4. これらに該当する患者グループに干渉したり、治療を強要したりしない。行う場合は、心理的支援のかたちで、性自認を理解している人のみが行う。
  5. 医療施設および開業医に対する内部レビュー・審査の取り組みを強化し、法に従った医療サービスの専門的規範の遵守を確保する。

7万6,000 人以上の署名を集めた市民社会団体の嘆願書や、WHO ベトナム事務所からの書簡が発出されたのちに、当該指令が出された。書簡でWHOは「異性愛者以外の性的指向を転換させようとする行動は、すべて医学的正当性に欠けるという見解を堅持しており、道徳的に容認できない」と言明している。

前出のナイト上級調査員は、「同性愛と性自認は、いずれも人の経験の自然な差異であることを認める国が世界各地でますます増えている。今ベトナムがそこに加わった」と述べる。「ベトナム保健省は新しい指令で基本的権利を強化した。LGBTの人びとは、否定的な反応を恐れずに自分自身を表現するための基盤を徐々に得つつある。」

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

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